誠-巡る時、幕末の鐘-
術を使えば、簡単にどこの声でも聞くことができる。
手を空に伸ばし、目をすがめた。
「………芹沢さん」
奏はゆっくり手を下ろし、目を閉じた。
「奏」
優しい声と頭を撫でる手に目を開けると、珠樹だった。
「聞いてた??」
「うん」
「そう」
珠樹はそれ以上何も言わなかった。
奏も何も言わなかった。
「おい、お前に届けもんだ」
鷹がまだ日があるにも関わらず飛んできた。
いつもなら、見つかったらどうする、と頭の一つでも叩くのだが、今はそんな気分になれなかった。
黙って受け取った。
「じゃあ、確かに渡したからな!!」
鷹はまた空に舞い上がり、彼方へ飛び去った。