誠-巡る時、幕末の鐘-



―――次の日




奏は天皇からの呼び出しを受けた。




「壬生浪士組の芹沢なる者の捕縛を願いたい」




奏は思った通りの話だったので、冷静に聞いていた。




「芸妓達を断髪させるなどと皆が騒いでおる。それにその者は、他にも騒動を起こしている様子」


「………」


「これ以上は黙っているわけにはいかない」




言いにくそうに奏にそう切り出した。


奏は肘をついて物憂げにしている。


扇を閉じては広げ、広げては閉じを繰り返していた。




「それで??私を呼び付けたというわけか」


「あ、あぁ」




奏の前だと天皇の威厳など、微塵もなくなってしまう。




「………まったく、ここも変わってしまった。昔は自然に溢れていたというのに」




奏は内裏の中を見渡した。



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