誠-巡る時、幕末の鐘-



ここは……内裏がある場所は、雷焔家当主の屋敷があった場所だった。


この京都は、雷焔の里があった。


風戸の里が、京都の外れにあるのはそのためだ。


昔、昔の話だが。




「……いいだろう。近藤局長に伝えておく」




奏は視線を室内に戻した。




「自然ですら変わる。人が変わるのも無理はない」




そう言った奏は儚げに笑っていた。


ともすると、泣きだしそうな笑みだった。




「きちんと朝廷からも命令を出せ。そうすれば、彼らにもきちんとした名目を与えてやれる」


「了解した。そのように計らおう」




天皇が頷いたのを見て、奏は立ち上がり、そのまま退出した。


辺りが紅い夕陽に包まれた頃だった。



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