誠-巡る時、幕末の鐘-



「響達には聞かせられないようなことです。……近々、芹沢さんの捕縛命令が出ます」


「………そうか」




近藤は静かにそう呟いた。




「しかし、そういうのは建前で、あなた達に暗殺の命令も下るはずです」


『………』




みんなは黙って聞いている。


とうとう来たか、という具合だ。




「みなさんに先に知らせておいた方が心の準備もできると思いましたので、お知らせした次第です」




そう言うと、奏は立ち上がった。




「どこ行くの??」


「芹沢さんの所へ。一緒に飲む約束をしていましたから」


「……そうか」




奏は悲しげにニコリと笑った。




「爺、響達を呼んできて。もういいからって。みなさん、響には悟らせないでくださいね」


「すぐに呼びに行きます」


『あぁ(はい)』




あの子は知らなくていい。


無垢な少女は無垢なままで。




奏は広間を後にした。



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