誠-巡る時、幕末の鐘-
―――芹沢の自室
「芹沢さん、雷焔です」
「あぁ、遅かったな。入れ」
「失礼します」
部屋の中では芹沢が酒を選んでいた。
「いっぱい集めましたね」
「だろう??どれを飲もうか」
芹沢は腕を組み、考え込んだ。
奏はその顔を見て、クスクスと笑った。
「何だ??人の顔を見て笑うなんて失敬な」
「すみません。そんなに真剣に考えこまなくてもと思いまして」
奏は素直に謝った。
だが、笑いをやめようとはしない。
春から半年近く一緒にいるのだ。
本当に怒っているかどうかの区別はつく。
今のは怒っていない。
「お前と二人で飲む最初で最後の酒だ。選ぶ価値はある」
「………え??」
奏は笑いを引っ込めて、芹沢の方を見た。
冗談にしては笑えない。
芹沢の顔は真剣だった。