誠-巡る時、幕末の鐘-
「何言ってるんですか!!芹沢さんの予定と私の予定が今まで合わなかっただけですよ。これからもっと飲めますって!!」
再び笑顔で元気に言ったが、芹沢の表情は変わらなかった。
「いいや、これで最後だろう」
芹沢は軽く笑った。
その笑みはどこか自嘲気味だった。
「お前は嘘をつくのが下手だ。それが笑顔のつもりか??」
「え??」
奏は芹沢の言っている意味が全く分からなかった。
「私、笑顔じゃない??」
「あぁ。お前が嘘をつく時は大抵そうだ。笑顔を作ろうとするが失敗する」
どれにするか決めたようで、酒を二人分ついだ。
「ほら、飲め。俺が選んだ酒だ。うまいぞ」
「……いただきます」
奏はゆっくりとそれを口に運び、少しずつ飲んだ。
味を覚えておくかのように、ゆっくりと、少しずつ。