誠-巡る時、幕末の鐘-
芹沢はそれを黙って見ていた。
そして、自分の分をくいっと飲みほした。
「………雷焔」
「……はい」
二人の間には重い空気が横たわる。
「俺はな、後悔はしてないぞ」
「……っ!!!」
懍とした声に、俯いていた顔を上げた。
芹沢の顔は、とても晴れやかにしていた。
「俺は俺の人生に誇りを持って生きてきた。だから後悔などない」
「芹沢さん、あなたは……」
あぁ……全てを知っているんですね。
これから起こるだろうことを。
知っていても、この場にいるんですね。
「俺は昔、処刑を待つ身だったんだ」
芹沢はぽつぽつと自分のことを話始めた。
「天狗党っていうやつに所属していてな。投獄されていたんだ。だが、許されて将軍の上洛にお供してきた。あいつらとな」
芹沢の視線の先には、近藤達がいる広間がある。
響達の手前、いつもと変わらない賑やかさを装っているが、心中はどうだろうか。
「俺はあいつらと京都に残り、この壬生浪士組を作った。だがな、如何せん、江戸からきた俺達だ」
芹沢は鼻で笑った。