誠-巡る時、幕末の鐘-



「私の情報収集能力をなめないでください!!私は壬生浪士組の監察ですよ!?」




あまり使うことがない……いや、全く使ったことがない役職名を初めて口にした。




「……そうか、そうだったな。すっかり失念していた」




芹沢も今ようやく思い出したようだ。


奏の情報収集能力は、元老院第五課長であるレオン程まではいかないが、高度なものだ。


屯所の中ならなおさらだ。




「まぁ、落ち着け」




芹沢は戸棚から饅頭を取り出して、奏の前に出した。




「昼間買ってきたやつだ。お前が好きな所のやつだぞ。食べるといい」




芹沢はこれで奏の機嫌が直ると思っていた。


ところが、奏も真剣だった。




「今は食べるような気分にはなりません」




その一点張りだった。




「お前の扱いも難しいな。近藤はどうやって手懐けたのやら」




首を左右に軽く振って、呆れたようにため息をついた。




「芹沢さんはいい人です!!」


「あぁ、分かった分かった。いい人でも何でもいい」




最後には芹沢が折れた。



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