誠-巡る時、幕末の鐘-
「お前と話すとどうも調子が狂う。土方もこんな感じのを相手にして大変だろうな」
また酒をついだ。
「ほら、もっと飲め」
「はい」
奏にもどんどん酒を勧めてきた。
「……雷焔」
「何ですか??」
再び訪れた真剣な声音に、奏も固い声で返した。
「お前に頼みがある」
「……私にできることなら何なりと」
芹沢は奏の方を真っ直ぐ見た。
「お前はこの先ずっと、あいつらの生き様をその目で見ててやれ。俺みたいな奴が出ないようにな」
「……」
奏は着物の袖に入れてある元老院長からの文をそっと押さえた。
「俺はたぶんもってあと一週間の命だ。最後まで見届けられない。お前は大丈夫だろう」
「芹沢さん……命令ですか??」
奏はそっと聞いた。
「……そうだ。俺の局長としての命令だ。局長命令は厳守だからな」
「……はい」
奏はこみあげてくるモノを必死で抑えた。