誠-巡る時、幕末の鐘-
「怪しいのが、土方だな。あいつは要注意だぞ。近藤のために嫌われ役を買ってでそうだ」
「あははっ!!そうですね」
芹沢が冗談ぼかして言うので、奏は笑ってしまった。
「やっといつものお前に戻ったな。男もだが、女も泣きそうな顔を見せるな」
「……やっぱり気付いてらしたんですね??」
芹沢にはやはり、奏が女であるということがばれていた。
「当たり前だ。お前の双子の兄と微妙に違う。それが男と女の差だ。俺をなめるなよ??」
芹沢はニヤリと笑った。
最後の台詞は、さっき奏が芹沢に言った言葉と同じものだ。
奏に意趣返しをしたかったらしい。
芹沢は満足そうにしている。
「………芹沢さん」
「何だ??」
「これ、食べてもいいですか??」
奏は目の前の饅頭を指差した。
「お前、やっぱり食べたかったのか!!」
芹沢は口を開けて笑いだした。