誠-巡る時、幕末の鐘-
「芹沢さん」
「何だ」
「何でもありません。ただ呼んだだけです」
「何だ、それは」
ハハッと笑う。
「芹沢さん、私からも一つだけお願いしてもいいですか??」
「あぁ、何だ??言ってみろ」
静かな声が部屋を満たす。
「私の名前、奏って呼んでくれませんか??」
「そんなことでいいのか??無欲な奴だな」
芹沢は奏のお願いに拍子抜けしていた。
着物の裾は、奏に掴まれている。
「そんなことじゃありませんよ。大事なお願いです」
「やれやれ、我儘な壬生浪の紅一点だな、お前は」
やれやれと、肩をすくめた。
「…………奏……」
奏は慌てて飛び起きた。