誠-巡る時、幕末の鐘-



奏と珠樹は今日屯所で起こることを知っていた。


だから響を屯所から連れ出した。


この事を知らせないためにも。


だが、響は知ってしまった。




「珠樹??まだ手、駄目??」


「うん、駄目。まだもうしばらくこうしてて」




千早の目は珠樹が素早く隠していた。




「誰か響を部屋まで運んでくれる??」


「俺が運んでやるよ」




原田が名乗りをあげた。


軽々と響を抱き上げ、部屋まで運んでいった。




「千早、僕が抱っこしてあげるから目をつぶってて」


「分かった」




千早も珠樹にしっかりと抱っこされて中に入っていった。




「新見さん、死した魂に罪はもうないわ。あなたに安寧が訪れんことを」




奏は柏手を二度打った。


辺りにサアッと風が起こり、今まで屯所に満ちていた負の気が取り去られた。



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