誠-巡る時、幕末の鐘-
当の本人は……。
「ちょっとだけだって。大丈夫。寝ちゃっても連れて帰るから」
「わわっ!!」
響に酒を飲ませようと奮闘していた。
「おい、奏〜!!こっちにも芸妓をまわしてくれよ!!」
永倉の悲痛な叫びに、ようやく顔を芸妓達に向けた。
「綺麗なお姉さん方、あんまり怒るとその綺麗な顔が台無しですよ?もったいない。そんなに綺麗なのに」
ついでに笑顔もニコッと。
『……は、い』
喧嘩をしていた芸妓達はたちまち大人しくなった。
(お前も女だろーがぁっ!!!何でモテてんだよ!!!)
モテない男達の哀れな叫びは、口にされることはなかった。
口に出せば最後、余計悲しくなる。
それが十分に分かっていたからだ。