誠-巡る時、幕末の鐘-



血が大量に流れている。


芹沢は身体を引きずりながら庭に出た。


侵入者達は追いかけてきたが、それ以上斬りつけることはなかった。


大雨の中、人影がポツンと庭に立っていた。


長い髪が濡れてしまって顔にへばりついている。




「……雷焔。お前も来たか」




ずぶ濡れになりながらも、庭に立っていたのは、奏だった。


侵入者達も、奏を見て足を止めた。




「芹沢さん」


「女が泣くなと言っただろう??」




雨のせいで泣いているように見えたのか、それとも、芹沢だけには分かったのか。


芹沢は力なく笑うと、ぐらりと倒れた。




「芹沢さん!!」




奏は芹沢に駆け寄った。


縁側がびしょ濡れになるが、今はどうでもいい。




「芹沢さん、あなた何で刀を!!」




刀を取らなかったのか、と責める奏に芹沢は苦笑した。




こいつは何を言っているのか。



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