誠-巡る時、幕末の鐘-



「俺が刀を取ったらお前の大切な仲間が傷つくぞ??」




そう言って痛みを堪えて笑った。




きっと一生分の笑みをこの数日で使いきっただろう。


だが、それでいい。


これで締めだ。




「雷焔、最期の頼みだ……俺を殺せ」




笑顔を消し去り、真剣なそれになる。


奏の心臓がドクンと跳ねた。




今、この人は何を言った??


何を私に頼んだ??




「雷焔」


「私に……人を殺せと??」




静かに名前を呼ぶ声に、かすれた声で返す。


だが、芹沢の瞳が揺らぐことはない。




「お前もこれからは人を斬ることになる。その初めが俺というだけだ」


「……私は、人を斬ることはない。絶対に」




奏はこれが人を斬る初めてではない。


そこにいる沖田だって以前切ってしまった。


もう、あんなことにはならないと自分自身に誓った。


そして、元老院の第一原則。


―――人を殺してはならない。



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