誠-巡る時、幕末の鐘-



「これは貸しにしときます。利子つきで返してくださいね。早く生まれ変わらないと大変なことになりますよ??」




奏は袖でごしごしと涙を拭った。


代わりに、満面の笑みを見せる。


すごくいびつだが。




「あ、でも冥府の官吏殿に馬鹿野郎とか言ってくれたら無しにしてあげます」


「………」




奏はフッと悲しげに笑った。




「でも……絶対無理だから……早く生まれ変わるしかないですね」


「……」




芹沢が奏に返事をすることはもう二度とない。




「奏、もう…」




原田が全て言いたいことを言い終えたらしい奏の肩を軽く押さえた。




「うん。布団に寝かせてあげよう」


「あぁ」




原田が芹沢を部屋の中に運び、山南が綺麗に整えた布団に寝かせた。




「お梅さんは私がやるから。みんなは平山さんを」




部屋の中では、芹沢の贔屓にしていた芸妓のお梅と平山が首を斬られて事切れていた。


一緒にいた平間や他の芸妓は逃げおおせたらしい。



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