誠-巡る時、幕末の鐘-



「お梅さん、すみません。せめてもの償いに、あなたの愛した芹沢さんの隣に」




お梅は芹沢を愛していた。


芹沢が他の芸妓に迫っていても。


一途に愛していた。


だから他の芸妓と一緒に逃げなかったのだろう。


芹沢と共に果てる道を選んだ。




「向こうで冥官殿に会ったら、あなたは黙っててくださいね。あの人、女にはたぶん甘いから」




綺麗に首と胴体をつなぎ止め、傷が見えないように包帯を巻いた。




<女の傷は高くつくんだ。死んでからも美しくありたいのが女ってもんだよ>




以前、お梅が奏に言った言葉が蘇った。




「お梅さん、どうですか??私は響程器用じゃないのでこれで勘弁してください」




奏は隣で眠る芹沢の手を、お梅の手に絡ませた。


眠っているようにしか見えない三人。


今にも起きだして、酒を持ってこいとか言いだしそうな気がする。


それは叶わぬ思いだけど。


そう思わずにはいられなくて。



< 630 / 972 >

この作品をシェア

pagetop