誠-巡る時、幕末の鐘-
「お梅さん、すみません。せめてもの償いに、あなたの愛した芹沢さんの隣に」
お梅は芹沢を愛していた。
芹沢が他の芸妓に迫っていても。
一途に愛していた。
だから他の芸妓と一緒に逃げなかったのだろう。
芹沢と共に果てる道を選んだ。
「向こうで冥官殿に会ったら、あなたは黙っててくださいね。あの人、女にはたぶん甘いから」
綺麗に首と胴体をつなぎ止め、傷が見えないように包帯を巻いた。
<女の傷は高くつくんだ。死んでからも美しくありたいのが女ってもんだよ>
以前、お梅が奏に言った言葉が蘇った。
「お梅さん、どうですか??私は響程器用じゃないのでこれで勘弁してください」
奏は隣で眠る芹沢の手を、お梅の手に絡ませた。
眠っているようにしか見えない三人。
今にも起きだして、酒を持ってこいとか言いだしそうな気がする。
それは叶わぬ思いだけど。
そう思わずにはいられなくて。