誠-巡る時、幕末の鐘-
「奏、ちょっといいか??」
「いいですよ」
肩を叩かれたので後ろを振り向くと土方がいた。
広間の外を指差すので、土方の後についていく。
「何ですか??」
「おめぇ、響には何て説明した??」
「ちゃんと説明しましたよ。これは長州藩士の仕業だって」
土方が考えた筋書き通りを言った。
これから奏が響に対して、突き通すことになる嘘の始まりだ。
「そうか。悟られないようにしろよ」
「こっちの台詞。角屋で失言したの、土方さんでしょ??」
奏の切り返しに、土方は頭をポリポリとかいた。
「あ〜。あれなぁ」
「お互い様ってことですよ。………でもね、土方さん」
奏が真剣な表情になった。
「響も鬼です。鬼は総じて勘がいい。私は響がもう既に知っていないことを祈りますよ」
それだけは何としてでも避けたい所だ。
仲間内で暗殺したことなど、知るのは奏達だけで十分だ。
でなければ、栄太達の心に深い傷が残る。
奏は自分の手の中に残る感触には気づかぬふりをした。