誠-巡る時、幕末の鐘-
奏は荒木田に関しては一切の同情を捨てた。
「楠……か。結構いい奴だったのにな」
響の仕事をよく手伝ってくれていた。
響も嬉しそうにしていたので、放っておいたが。
「この傷跡……」
奏は原田をジッと見た。
原田は奏と視線を合わせないようにしている。
決まりだ。
「後ろからというのは頂けんな」
響は俯いていて見ていないので、存分に凍り付いた瞳を原田にぶつける。
「あ、の。彼らはどうなるんですか??」
響が土方に尋ねた。
奏も響の背後に回った。
無言の圧力をかけるためだ。
これ以上響の胸を痛ませるようなことは許せない。
「……そうだな。ひとまずここに置いとくわけにもいかねぇから。壬生寺に預けとくか」
「そうですか」
響はホッと安堵のため息をついた。
奏もそれを見て、無言の圧力をやめた。
響は前にいるから見えないが、奏は凄まじい形相をしていた。
まさしく、物語の山婆と鬼が混ざったかのごとく。