誠-巡る時、幕末の鐘-



「響、こっちはきちんとしとくから。夕食の準備してきて」


「……はい」




響は買ってきた材料と共に台所へ走っていく。


長州の間者だったからか、響は新見の時のようにはならなかった。


気絶されたらどうしようかと思ったが。




「左之さん、良かったな。命拾いして」


「あ、あぁ」


「響が気絶したら左之さんも同じ目に合わせようかと思ってたよ」




そう言う奏の顔は笑顔だ。


しかし、目は先程と同じ、凍てつく雪山でもこんなには冷たくならないだろう瞳。




「奏ちゃんは大丈夫なの??」


「ん??えぇ。人間の死なんて腐るほど見てますから」




けろりと沖田の質問に答える奏。




「仲間と敵、身内とそれ以外の死じゃあ違うのは当たり前でしょう??……私は響のように甘くはありませんよ」




奏がニコリと笑った。


だが、その笑顔はいつものとは違い、酷薄な笑みだった。




「ただいま〜」




門の方から千早の元気な声がした。


ひょっこりと庭に顔を出してきた。



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