誠-巡る時、幕末の鐘-



「お帰り、千早」


「ただいま。……どうしたの??」




千早の目が、庭に蓙を引いて寝かせられている三人にいっている。




「間者……って知らないか。敵だったんだよ。彼らは」




またもや珠樹が分かりやすく言葉を噛み砕いて説明した。




「ふ〜ん」




千早は子供らしく、怖がる素振りを見せたが、一瞬、ほんの一瞬見せた表情は子供のものではなかった。




「僕、中にいるね!!ほら、桜花も!!」




足元に擦り寄ってきた桜花を抱き上げ、玄関から中に入っていった。




「ほら、早く後始末。自分がしたものはきちんと最後までやり通せ」




奏の言葉に、みんな行動を再開した。




「まったく、珠樹にも知らせるなら、私にも教えて欲しかったですね」


「あぁ、すまないな」




恨み事のように言う奏だが、本当はそうは思ってはいない。




別に敵さんがどこで死のうと構わない。


だけど、響に見られたんじゃね。




どこまでも響第一だ。


主がこの場にいないがゆえのこの反動なのだろう。



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