誠-巡る時、幕末の鐘-



―――壬生寺




「珠樹、あれ」


「うん。誰かいる」




墓の前には先客がいた。


気づかれないように背後に回る。




「こんな夜中にどうしたんですか??」


「……っ!!」




いきなり背後から声をかけられて、人影は戸惑った。




「ははぁん。その顔には見覚えがあるわ。……桂小五郎」


「……っ!!新撰組の者か!!」




桂は奏達から急いで距離をとった。


刀をすらりと抜く。




「仲間の骨をとりに来たの??」




奏が嘲笑するのを扇で隠すが、まったく役にたっていない。




「よくも仲間を!!」


「おいおい、責任転嫁しないでよ」


「先に間者を送ってきたのはそっちでしょ??」




激昂した桂の太刀を、ひらりひらりと踊るようにかわす二人。


笑顔さえ見せている。




「桂小五郎。剣の師は、斎藤弥九郎。三剣客の一人か。だが、所詮弟子は弟子」


「たとえその斎藤とかいう男でも……鬼には勝てないよ」




奏は刀に手を触れることもなく、珠樹も自分の刀には触れなかった。


ちなみにこの情報源はレオンだ。



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