誠-巡る時、幕末の鐘-
「仲間??……虫酸が走るね」
珠樹の表情はとても冷めていて、嘘を言っているようには見えない。
だが、夜中にも関わらず、この墓に来たということは関係者であることは間違いない。
桂は脳をフル回転させていた。
「珠樹、さっきから二人で何言ってんの??」
奏が不思議そうにこちらに歩いて来た。
「何でもないよ」
そして、桂に刀を返してやった。
持っていてもいなくても変わらないと判断したからだ。
「近藤さんに引き渡したら??喜ぶんじゃない??」
珠樹の提案に、桂は身構えた。
だが、奏は薄く笑っただけだった。
「それは駄目。理にかなわない。院則にも干渉してはいけないってあるしね」
今さらだが。
「今日は芹沢さんの墓の前だから見て見ぬフリをしてあげる。でも……」
奏は言葉を区切った。
「彼らに手を出そうというなら私は許さない」
揺るぎない決意に満ちた声で言い切った。