誠-巡る時、幕末の鐘-
「奏、もう帰ろう」
珠樹が優しく促した。
「うん。芹沢さん、また来ますね??」
奏は立ち上がり、墓に背を向けて歩き出した。
《ありがとう、星鈴》
「………っ!!!」
懐かしい声がした気がして、急いで振り向いたが、そこには芹沢の墓があるだけだった。
「芹沢さん??……どういたしまして!!」
奏は満面の笑みを見せた後、珠樹の所まで走っていった。
すぐに珠樹に追いつく。
珠樹は待っていてくれた。
どちらからともなく、手を握る。
長い間、忘れていた温もり。
もう、手放さないように。
しっかりと。
『ねぇ、珠樹(奏)』
二人はキョトンと目を合わせた。
そして、同時に笑いだす。
双子の神秘か。
二人には相手の言いたかったことが分かった。
何故なら、それは自分も同じことを言おうとしたから。
二人の願い。
『……名前を呼んで……』
二人は今、とても幸せだった。