誠-巡る時、幕末の鐘-
行く年来る年
甘味捕物帖
―――十月某日、市中
「さて、甘味も買ったし……帰るか!!」
私、雷焔奏は現在、屯所を抜け出し、甘味屋に来ています。
秋が終わり、今は十月。
風が冷たくなって肌寒くなってきた。
「あ〜、寒くなってきたな〜、もう!!もう一枚着なきゃ駄目だな」
奏は羽織の袖に手を埋めた。
何を隠そう、私は寒いのが苦手だ。
だって日向ぼっこが寒くてできなくなる。
そうなると、私の精神安定剤は甘味だけに……最重要懸案事項だ。
日々過ごすだけなのに精神安定剤が必要なのは、暮らしている場所のせいだ。
勝手にそう結論づけている。
「誰かーっ!!」
奏が呑気に自分の季節感を考えていると、向こうの方で助けを呼ぶ声がした。