誠-巡る時、幕末の鐘-
「もう帰ってもいいですか??夕暮れ時だし、仲間が心配しているだろうし、黙って出てきたから」
奏は考えつく限りの理由をあげた。
黙って出てきたくだりでは、役人の男も目を丸くした。
「……あぁそれと籠を呼んでもらっていいですか??」
「あぁ、分かった。おい!!誰か籠を二つ呼んでくれ!!」
「一つでいいですよ」
男は部下らしき者にそう呼びかけた。
それに訂正をいれる奏。
「私は歩いて帰りますから。籠はあなたが使うためですよ。お疲れになったでしょう??」
奏は今回の騒動の被害者である老婦人に声をかけた。
身なりもしっかりしているし、優しそうなお婆さんだ。
事件のせいか、少しやつれているように見えるが。