誠-巡る時、幕末の鐘-
「お礼なんて……あっ、暮れ六つの鐘が!!やばっ!!」
どこかの寺の鐘が暮れ六つの時刻を知らせる音が響いた。
辺りはもう日が落ちてしまっている。
大分長い時間調書を取っていたらしい。
助かった!!
いい時に鳴ってくれたよ。
「……門限がありますので。では失礼します」
「あっ!!」
老婦人はまだ言いたげだったが、奏はそそくさと奉行所の門をくぐった。
そのまま振り返らずに屯所までの道を急いだ。