誠-巡る時、幕末の鐘-

魔王様のご滞在




―――屯所




奏は門が閉まっていたので、塀をよじ登ることにした。


よじ登ると言っても、軽く跳躍すれば鬼なので楽勝で越えられる。


トンっと軽く弾みをつけ、屯所の中へ入れた。




「……………」




入れはした。


だが、目の前には片足をパタパタとしている土方と、腕を組んで顔をしかめている珠樹の姿があった。


珠樹は出かける時に姿が見えなかったので声をかけなかったのだ。


どうやらそれで今、おかんむりらしい。


奏は顔を俯かせた。




「おい、お前門限を何だと思ってんだ??塀を飛び越えてくる奴が……どうした??」




いつもの長い説教を始めようとした土方が奏の異変に気づいた。


奏が俯いたまま肩を震わせ始めたのだ。


次の瞬間、奏がガバリと顔を上げた。



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