誠-巡る時、幕末の鐘-



「甘味〜甘味がぁ〜!!!」


「ぐおっ!!か、か、奏!!その、手ぇ、離せ!!」




土方の着物の襟を掴み、前後に凄い勢いで振った。


土方の頭が哀れにも、ガクガクと揺さ振られている。


舌を噛まないように言葉も途切れ途切れになった。




「奏、そのまま首しめちゃいなよ」




見ていた珠樹が面白そうに口元を歪めている。


珠樹は妹がここにいたいと思わせる人間が嫌いなのだ。




「何だと!!おい、奏!!いい加減にしろ、よ!!」




土方が奏の手を何とか止めた。


ここ半年で、奏の扱いにも慣れた。


土方が頭を悩ませているのは目下、歩く問題製造器の奏と、性格がひねくれている沖田だ。


二人が何かしら起こしてくれるので、仕事が全く進まない。


ならば追いかけ回して説教しなければいいというわけにもいかない。


頭が痛い問題だ。



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