誠-巡る時、幕末の鐘-
「珠樹〜!!」
「僕が明日一緒に行ってあげるから」
珠樹に抱きついた奏に、珠樹はよしよしと頭を撫でた。
「はぁ。……もういい。それより客だ」
「…………客??」
土方はそんな二人を見て、溜め息をもらさずにはいられなかった。
土方の言葉に、奏は珠樹の肩から顔を離して小さく呟いた。
私に客??
覚えがないんだけど??
栄太とかだったらわざわざ言わないし。
………………あ。
「…………まさか、ねぇ」
はっはっは。
まっさか〜。
頭では否定しつつ、奏はもときた道を戻ろうと、踵を返した。
身体は素直だ。
その顔は冷や汗がつたっている。
どうやらその客に思い当たったらしい。
そして、奏はその勘が外れないことも経験上知っている。
今回もやはり………。