誠-巡る時、幕末の鐘-
「あら??あなたは昨日の…」
奏がその声に顔を上げると、昨日のお婆さんだった。
「あなた、昨日助けて頂いた方じゃない??」
「いえ??違いますよ??お人違いじゃないですか??」
また、礼をとか言われたらたまったもんじゃない。
ここは知らないフリで通そ!!
「あら。じゃあ、あなたかしら??」
「いいえ。昨日は外出していませんよ??」
お婆さんは、隣にいた珠樹にも声をかけた。
双子だから分からなくても仕方ない。
「ごめんなさい。人違いだったみたい」
「いえいえ。世の中に三人は似た人がいるといいますからね」
奏はニコリと笑った。
お婆さんも、柔らかい笑顔を浮かべた。