誠-巡る時、幕末の鐘-
「申し遅れました。私、雷焔奏と申します」
向こうが名乗ったのにこちらが名乗らないのは礼を失している。
奏はニコリと微笑みながら名前を告げた。
「奏さんとおっしゃるのね??良かったわ。昨日はどうしても名前を言って頂けなかったのだもの。何とかして探らせようと思っていた所だったのよ??」
お婆さんは恨めしそうに言った。
「すみません。少々事情がありまして」
「うふふ。冗談よ」
奏が顔を若干引きつらせていると、お婆さんは茶目っ気たっぷりに笑った。
「はい、奏ちゃん。お仕事ご苦労様。これはうちからのおまけよ」
「おぉ〜!!やっぱりお仕事は真面目にやるもんですねぇ!!ありがとうございます!!」
奏は女将さんが持ってきた新しい甘味を美味しそうに頬張った。