誠-巡る時、幕末の鐘-
「お〜い〜し〜よ〜!!」
奏は珠樹に肩を預け、ご機嫌だ。
『奏ちゃん??』
沖田と珠樹が女将の言葉に反応した。
この中で奏が女であることを知らないのは女将だけのはずである。
「あぁ、女将さんは知ってるよ??私が女だってこと」
奏は、ね??と女将の方に首を向けた。
女将もニコリと笑い、頷いた。
「前、奏ちゃんがこの近くの川で水浸しになってるのを見つけたんよ。それで店に連れてきて着替えをしてもろた時に」
「いやぁ〜。思いの外、水が冷たくって」
腰に手を当てて笑う奏に、沖田も珠樹もため息しか出てこない。
贔屓にして顔馴染みのこの甘味処の女将だったからこそ良かったものの、違う者だったらよからぬ事を考えるかもしれない。
ここは一つ、危機管理を再度考え直させるべきか。
二人は同じことを真剣に考えた。