誠-巡る時、幕末の鐘-
「奏さんは甘い物がお好きなのね」
「はい!!」
お婆さんが奏の食べた甘味の量を見てびっくりしている。
それもそのはず。
ざっと皿の数、十数枚。
これが甘い物好き以外の何であろうか。
「なら、お礼はここの甘味にしましょう」
お婆さんは女将に甘味の詰め合わせを頼んだ。
「えぇ〜。いいんですか??ありがとうございます!!」
「いいえ。昨日のお礼よ」
奏は昨日礼はいらないと言ったのをころっと忘れ、顔を緩ませている。
甘味に懐柔されるのは奏の悪い欠点だ。
「あれには亡くなった夫から貰った大事なものが入っていたの。本当にありがとう」
「そうだったんですか」
大切な人だったんだろうな。
だってこんなにも嬉しそうなんだもん。
ご主人の事を語る時、お婆さんの顔は今までで一番優しい笑顔だった。