誠-巡る時、幕末の鐘-
「えぇ」
お婆さんもニコリと笑いそれに返した。
忠興も眼鏡の位置を直し、軽く微笑んだ。
「ほら、奏ちゃん。早く」
「置いていかないから早く」
「はいは〜い!!」
奏は先に行っていた珠樹達を追いかけていった。
「雷焔…奏さんですか」
「どうしたの??」
「いえ。……何でもありませんよ??」
奏が去った後、忠興は一人呟いていた。
お婆さんはそれを聞きとがめ、怪訝そうにした。
だが、孫の一言を信じた。
雷焔……。
やっと見つけましたね。
時間がかかりましたが。
仕方ありませんね。
さて。
ゆっくりと仕掛けていくことにしましょう。
忠興は心の中で様々な事を考えていた。
顔には決して出さず、笑みを絶やさずに。