誠-巡る時、幕末の鐘-



「昨日奏ちゃんが助けたお婆さんに出会って、甘味の詰め合わせをお礼にって貰ったんですよ」


『なるほど』




甘味で気分があそこまで上がれるのか。


答え。


奏の場合は上がれるのだ。




「じゃあ、僕、奏ちゃんに甘味のお裾分け貰いに行きますね」


「あ!!待て!!」




沖田が素早く立ち上がり、部屋を出ると、珠樹も後を追った。


珠樹も気づいたのだ。


自分と奏の関係は決して崩れることのない強固なものだ。


ならば沖田にくっついていて、奏に近づくのを阻止した方がより効率的に奏のことを一人占めできる。


沖田も沖田で、甘味処での時のように珠樹の意表をつく行動に出るようにしている。


だが、二人は気づいていない。


お互い以外にも敵がいることを。



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