誠-巡る時、幕末の鐘-
「お前、誰かと一緒にいろって言われたの聞いてたか??」
響は昨日、奏に書類を見せてもらった時に、言われた言葉を思い出した。
〈今、私達は狙われているかもしれない。だから響は単独行動は避けてね〉
そう言われていたものの、みんな何かと用事があって言いだせなかったのだ。
「す、すみません!!」
「はぁ。まったく。俺が市中に出てきてたからいいものの。……仕方ねぇな、俺が付き合ってやるよ」
「え、悪いですよ!!やることいっぱいありますし!!」
「お前の親父にいつまでもケチつけられたらたまったもんじゃねぇ。それだけだ。行くぜ」
「あ、はい」
鈴はそう言ったが、響の持っていた荷物をさりげなく持った。
響はそこに鈴の優しさを感じとった。
爺や奏は喜ばないだろうが、新たな恋の始まりの予感が漂ってきた。