誠-巡る時、幕末の鐘-
「行かせていただきます!!」
「えぇ、是非お待ちしております。そうですね、明後日…はいかがでしょう。丁度私が休みなのですが」
急すぎますかね、と忠興は苦笑した。
「いえ!!大丈夫です!!」
「それじゃあ、昨日の甘味処にいらしてください。迎えに行きますので」
「分かりました。それじゃあ、また明後日」
「えぇ。楽しみにしてますね」
奏は忠興と別れ、走って屯所への道を駆け抜けた。
「本当に楽しみですよ。鬼の姫……。まずは一つ」
先程までの優しげな笑みは失せ、代わりに酷薄な笑みを忠興は浮かべていた。
鬼の姫。
人間であるはずの忠興が知るはずのない事実を知っている。
事態は動き始めていた。