誠-巡る時、幕末の鐘-



「行かせていただきます!!」


「えぇ、是非お待ちしております。そうですね、明後日…はいかがでしょう。丁度私が休みなのですが」




急すぎますかね、と忠興は苦笑した。




「いえ!!大丈夫です!!」


「それじゃあ、昨日の甘味処にいらしてください。迎えに行きますので」


「分かりました。それじゃあ、また明後日」


「えぇ。楽しみにしてますね」




奏は忠興と別れ、走って屯所への道を駆け抜けた。




「本当に楽しみですよ。鬼の姫……。まずは一つ」




先程までの優しげな笑みは失せ、代わりに酷薄な笑みを忠興は浮かべていた。


鬼の姫。


人間であるはずの忠興が知るはずのない事実を知っている。


事態は動き始めていた。



< 727 / 972 >

この作品をシェア

pagetop