誠-巡る時、幕末の鐘-



「はいはーい。争わなーい」




奏がさっと間に身をすべりこませた。




「珠樹、不機嫌になる理由が分からないんだけど。部屋に入られたぐらいで」




今は妖を入れてないし。


寝てるわけでもないし。


部屋散らかしっぱなしにしてるわけでもないし。




「………何でもないよ」




珠樹は心の中で、鈍感、と悪態をついた。




普通、女は無断で部屋に入られたら恥じらうものだ。


少なくとも今のご時世はそうだ。


なのに奏ときたら……。




「もたもたしてると夜が明けるよ」


「うわっ!!ちょっ!!」




奏はとうとう首根っこを掴まれて、レオンに引きずられることになった。


その後をみんな急いでついていく。




「一気に静かになったな」


「あぁ。うるさい奴らだ」


「澪ちゃん、千早君、わらびもち食べる??」


「たべる!!」


「うん」




屯所は残った者達がのんびりと過ごしている。


ここだけ見れば、実に穏やかな夕食後の風景だ。



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