誠-巡る時、幕末の鐘-
「お前、黙って聞いてればぬけぬけと…」
どうやら男が反撃に出るらしい。
怒りに声を震わせている。
「レオン様のこと知らないみたいですねぇ。知らないということは時に幸せであり時に不幸だ、って誰かが言って……」
ナルの空気を読めない発言に、奏は本気で殺意が芽生えかけた。
実際には最後まで口にされることはなかったけれど。
「左之さん!!お手柄!!」
ナルの口を手でふさいで黙らせたのは原田だった。
「いや。こいつ空気読まなさすぎだろ」
「聞いてるこっちがハラハラさせられるぜ」
「それより副長、あの二人はいかがしましょう」
斎藤の指差す方を見ると、いつの間にか刀を抜いている沖田と珠樹の姿があった。
結界がはられているため、外からは見えないが、もしうっかり出てしまって人に見つかったらまずい。
土方はハアっとため息をつき、そちらへ足を向けた。
いつになっても土方の苦労は無くならないみたいだ。