誠-巡る時、幕末の鐘-
「ま、だいたいの薬には耐性ついてるから関係ないし。食べちゃお」
元老院第六課薬草管理担当、周りがつけた呼称は《当代随一の薬師》。
人間のしびれ薬など、薬のうちにも入らなかった。
「あ〜おいしかった」
「すみません。……全部食べてしまわれたんですか??」
「えぇ。すいません。あんまりおいしかったものだから」
奏が意味深に言うと、忠興はさすが、まったく表情に出さなかった。
「いえ、構いませんよ」
「この邸は本邸ではないんですね」
「えぇ。私ももう大人ですから、朝廷に出仕することになった時、新しく邸をもらいました」
「いい庭ですね。冬でも分かる」
奏は襖を開け、庭を眺めた。