誠-巡る時、幕末の鐘-



「ま、だいたいの薬には耐性ついてるから関係ないし。食べちゃお」




元老院第六課薬草管理担当、周りがつけた呼称は《当代随一の薬師》。


人間のしびれ薬など、薬のうちにも入らなかった。




「あ〜おいしかった」


「すみません。……全部食べてしまわれたんですか??」


「えぇ。すいません。あんまりおいしかったものだから」




奏が意味深に言うと、忠興はさすが、まったく表情に出さなかった。




「いえ、構いませんよ」


「この邸は本邸ではないんですね」


「えぇ。私ももう大人ですから、朝廷に出仕することになった時、新しく邸をもらいました」


「いい庭ですね。冬でも分かる」




奏は襖を開け、庭を眺めた。



< 772 / 972 >

この作品をシェア

pagetop