誠-巡る時、幕末の鐘-



「まったく。人間の寿命はあっという間だからって思ってたし。……失敗したなぁ」




あの時無理矢理にでも連れていけばよかった、と珠樹は自嘲ぎみに微笑んだ。




「何だかよく分からないのも横から出てくるし。……沖田だけだと思ってたのになぁ」


「てめぇ、いい加減にしやがれ。餓鬼じゃあるまいし」


「奏の決めたことだ。お前がとやかく言うことではない」




クスクス




「じゃあ君達は奏がここを出たい、そう言ったらどうするの??諦めてくれるんだ」


「てめぇ……」


「………」




土方が低い声を出し、珠樹を睨んだ。




「な〜んだ。簡単だ。奏からそう言わせれば良かったなんて。沖田にはりつくなんて面倒なことしたなぁ」




珠樹は体を軽く曲げ、可笑しくてたまらないというように笑った。



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