誠-巡る時、幕末の鐘-
―――市中
「何も異常はないみたいだね………一君??」
全くしゃべらない斎藤を奏は訝しそうに振り返った。
いつもながら分かりにくい。
「もう!!どうしたの!!」
「奏は……新撰組が好きか??」
「なぁに??改まって」
「どうなんだ??」
斎藤は奏を真っ直ぐに目をそらすことなく見た。
「………好きよ。壬生浪はね、私の……そう、家みたいなもんね」
「家??」
「そっ。……どうしたの??何かあった??」
奏は斎藤の顔を下から覗き込んだ。
「何か変だよ??」
「……大丈夫だ。屯所へ戻ろう」
「うん」
奏はまだ首を傾げながらも素直に従った。