誠-巡る時、幕末の鐘-



―――屯所




「斎藤、貴様!!」


「よせ!!」




珠樹が斎藤の襟首を掴み、詰め寄った。


それを原田が押し止めている。




「かなで、しんじゃうの??いなくなっちゃうの??」


「大丈夫ですよ。奏がこんなことで死ぬはずがありません」




澪ちゃんが涙を瞳一杯に溜めてナルにしがみついている。


ナルも一応笑顔を見せるが、その笑顔も暗い。


鬼である奏にとっても傷が深すぎたのだ。


人間であればその場で出血死は免れないくらいの。




「失礼します」




今まで奏についていた響が戻ってきた。




「奏は??奏は大丈夫なのか!?」




藤堂が矢継ぎ早に尋ねた。




「傷は問題ありません。今はナルさんから頂いた薬を飲んで寝ているだけです。ただ……」


「ただ??ただなんだい??」




近藤が訝しげに尋ねた。



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