誠-巡る時、幕末の鐘-
「雷焔君、さっ、音無君も見つかったんだから部屋に戻りなさい」
「また熱だしちまうだろうが」
奏は井上と土方にそう言われ、広間を出ていこうとした。
しかし、足を止め、斎藤の前に足を進ませた。
「一君、怪我は??」
「……大丈夫だ」
「そっか。良かった」
「奏……すまなかった」
斎藤は奏に頭を下げた。
「謝られる覚えはないよ。私が勝手に間に立って勝手に切られたんだから」
「しかし」
「一君が気に病むことはないよ。だってこの傷、人間だったら死んでるから」
「……」
「私はもう二度と大切な人を誰にも奪わせない。たとえ人間を傷つけても…殺しても。そしてこの身が傷つこうとね」
「奏…」
奏はクスリと笑うと立ち上がり、響に肩を借りながら部屋に戻っていった。