誠-巡る時、幕末の鐘-
「奏……どうして??」
珠樹は奏の宣言を聞いて呆然としていた。
「斎藤、攘夷志士の捕縛よくやった」
「副長…」
土方は斎藤にねぎらいの言葉をかけた。
「奏があぁ言ってんだ。…ったく、あいつ。こっちがこんなに心配してんのに気ままなこと言いやがる」
「本当ですよね。僕達の言ってきたことなんか頭に残ってるのかどうか」
土方の言葉に沖田が肩をすくめた。
先程までの張り詰めた空気は霧散していた。
奏があぁ動いていたのだから大丈夫だ。
みんなの心に安心感が膨らんだ。
「何で人間なんかの……こいつらのためなんかに…」
ただ、珠樹だけは唇を噛みしめ、低く小さくうめいた。
そしてさっと立ち上がり、広間を出ていった。
沖田がそれを見て、黙って後を追いかけた。