誠-巡る時、幕末の鐘-
沖田は珠樹の様子を黙って見ていた。
この子、本当に僕に似てる。
僕も近藤さんを土方さんにとられて…。
だから奏ちゃんはとられたくない。
僕は小さい頃から自分の感情を制してきた。
笑いたくない時でも笑い、荒波を立てないように過ごした。
《沖田さん、笑いたくないなら無理して笑う必要ありませんよ。だって沖田さんはどんな沖田さんでも沖田さんだから》
僕達の前に現れた彼女が言ってくれた言葉。
《沖田さんにもきっと一番に思ってくれる人が現れますよ》
その後、冗談っぽく、君がなってよ、って言ったけど、本当は本心でそう思ってた。
僕が僕であれるのは奏ちゃんの前だけ。
たとえ寿命が違っても、明日をも知れぬ命でも。
この思いだけは譲れない。
彼が本気ならばなおさら。