誠-巡る時、幕末の鐘-
奏は肘を立て、身を起こした。
「どうしたんですか??二人共、そんなに深刻そうな顔して」
斬られた本人は時たま違和感を感じるだけで、他は何も変わっていない。
「奏さぁ。どっちを探してたの??」
「どっちって両方だよ」
「両方??そんな曖昧なことやめてよ」
「曖昧って……二人共私にとって大事。これじゃあ駄目なの??」
奏も二人の重苦しい気持ちが移ったのか、真剣な表情になった。
「奏ちゃん、僕は君が好きだよ」
「僕も奏が好き」
「うん、知ってる」
奏は当たり前のような顔をしながら頷いた。
「違うよ。奏が思ってる友達としての好きじゃない」
「男と女としてってこと」
「うえっ!!?」
鈍い奏にはこれくらい直球に言わないと通じない。
やっと意味が分かったのか、奏は妙な声をあげて固まった。