誠-巡る時、幕末の鐘-
「土方さん、本っ当に助かりました」
「おめぇも妙なのに好かれるなぁ」
「あ、ははは」
奏は苦笑するしかなかった。
「ほらよ、粥作ってやったぜ」
「ありがとうございます」
土方から出来たてらしい粥を受け取った。
そして、クンクンと匂いをかいだ。
「何してんだ??」
「匂いをかいでるんですよ。石田散薬入ってないかなぁって」
「………」
奏は口の端を上げ、一口食べた。
温かいそれは、大量の血を失い、体温を奪われた奏にとって、心の芯まで伝わった。
「おいしいですね、これ」
「…………そうか」
石田散薬のことを持ち出され、相手は怪我人、怪我人、と自分に言い聞かせていた土方は反応が遅れた。