誠-巡る時、幕末の鐘-



「………どっちかなんて選べるはずないのにねぇ??」




奏がふっとそう呟いた。


瞳は大きく揺らいでいる。




「珠樹は双子の兄だし、沖田さんは人間だし。……土方さん」




そういうことならば土方の方が経験豊かだ。


土方もあの二人の気持ちには気付いていたので、奏が何の事で悩んでいるのかすぐに分かった。




「俺がどうこう言ったところで結局決めるのはてめぇ自身だ。どちらも選ばないならなおさらだ」


「私自身…」


「冷めねぇうちに食べろよ??」




土方はそう言って部屋を出ていった。




どちらか選ぶのは自分自身。


どちらも選ばないのも自分自身。




恋の道は茨の道とはよく言ったもの。


奏はその日、遅くまで眠ることができなかった。



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